ルクレッツィアのきもち〜宝条ニツイテ思フ〜


 FF7に於いて、宝条が本当の「悪役」なのであろうか?
彼の狂気なまでの研究に対する執着こそが、すべての元凶なのであろうか?
 本編で語られる数少ない手がかりと、筆者の独断と偏見による解釈から、彼のすがたを洗い出してみたい。

 まず、なぜ宝条はそこまで研究にこだわるのであろうか? これには神羅科学部門の前任者、ガスト=ファレミスの存在が大きく関わっている。
 ガスト博士は古代種研究に関して偉大な功績をあげた天才的な人物であった。そのような人物の後任となるべき宝条のプレッシャーといったら、想像を絶するものであったろう。性格的におおらかであったなら、いくらかそれを軽減できたかもしれないが、どうやら宝条は神経質な方であったように思われる。また、学者の間では派閥のようなものがかなり重要である(というようなことを聞いたことがある)らしく、宝条はガスト博士を慕う同僚の視線に少なからず焦りや不安を覚え、学者としての自己の存在意義を疑うことを禁じ得なかったであろう。
 周囲からガスト博士と自分とを常にくらべられながら、少しでも研究に功績を残そうと、ひとり躍起になる宝条。しかし能力の差は歴然であり、自分で自分を追いつめてゆく日々が続く・・・・・・。
 なんとしても学者としての自分を認めてもらいたいという思い。「出世」や「名声」、それはたいていの男が求めてやまないものである。自分が身を投じた世界で立派に身を立てたいという願い──・・・・。それを誰が咎めることができようか。

 そんな夢と現実とのはざまで悩みうちひしがれる宝条。──・・・・ルクレッツィアはそんな彼を見ていられなかった。一人傷つき、苦悩する宝条のすがたが、ルクレッツィアの心を揺さぶったのである。
 ヴィンセント(当時27歳)は仕事もうまくいっている。当面のところ、不安要素はない。彼とつきあっていれば、それなりの幸せが手にはいることは、ほぼ間違いないだろう。だが、宝条は──・・・・。
 孤独な宝条。理解してくれる者もなく、ひとり。
 そんな宝条を支えられるのは、自分しかいない。自分が離れていってしまえば、宝条は──・・・・。
 そして、ルクレッツィアは宝条を選んだのである。
 宝条を守りたいという思い、そしてお互い科学者であるが故の、人の踏み入ったことのない、さらなる高みを極めんとする探求心──・・・・。
 それが、悲劇を生みだしてしまったのである。

 彼らの思いが汚れなきものであったのか、はたまた過ったものであったのかを一言で分析することなど不可能である。なぜなら、当人にしては純粋な思いが他人からすれば歪んだものに映るというのは、ままある事だからである。
 そう、誰も他人の心情を完全に理解することなど不可能なのだ。時には、自分自身でさえ──・・・・。

 宝条自身も、自分が過ちを犯したことに気付いていたかもしれない。言いしれぬ運命の渦に巻き込まれ(確かにそれは自分自身が引き起こしたものであるかもしれないが)、後戻りもできないほどの深みに填ってしまった自分に気付いていたのかもしれない。

 ミッドガルでのバトルの後、私は彼のすがたに悲壮なものを感じた。
 口では科学者としての好奇心を抑えられなかった、といっているが、果たして本当にそうだったのだろうか? 抱えきれないほどの罪を背負ってしまった自分、そして抱えきれないほどのさだめをセフィロスに背負わせてしまった自分を、自分で罰したのではなかろうか?
 私には、あの時彼が泣いていたように思えてならない。
 心の中で、声にならない叫びを発していたように思えてならない。

 確かに彼のしたことは、普通に考えれば人道に背いた赦されざるべき行為であろう。だが、彼だけを責めることはできないと思う。
 宝条もまた、ある意味で犠牲者であることに変わりはないのだから・・・・。


REPORTED by Tao Nakasa 著作日1997.5.5

なんか、ヘンな文章……(^-^; あはは……。