薄暗い石造りの狭い通路に、渇いた足音が響きわたる。 ロックはひとり、フィガロ城の地下・機関室を目指していた。 急勾配の階段を下り、通路の左右に作られた小部屋なども しっかりと覗き込みながら、最深部へと進んでいく。 「ふぅん…宝物庫も兼ねてた、って感じだな…」 職業柄かあちこちを物色しつつ、ロックはひとりごちる。 フィガロ城によく足を運ぶようになって5年以上は経つが、
まぁ、それは無理もないことだろう。
世界崩壊後に城が砂の中で往生するという事態を
ロックは、みなが寝静まった真夜中にここに忍び込んだのだった。 通路のわきには、どっしりとした対の獅子の置物やら、
ひととおり見学しおわり、ロックは最深部であろう扉の前に立つ。
ロックは薄暗い機関室の中に、足を踏み入れる。
ロックは内心おののきながらも、通路を進んでいった。
ロックは、身震いした。
「さすが、このバカでかい城を動かす動力室だけあるなぁ…」
「さて…どこにあるのかな…」
ここへは、別に頼まれて来たわけではない。
数日前、飛空挺ファルコン号でのおだやかな団欒。
普段さほど個人的な感情をおもてに出さないエドガーの、
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「さて、戻るか…」 ロックはペンダントをポケットにねじ込み、足を踏み出そうとした。 「……!」 だがロックはぴたりと静止し、あたりの空気をうかがう。 ――なにか、妙な違和感を感じたのだ。 間違いなく、何かがいる。
確かに、ここに辿り着くまでに何回かモンスターに遭遇した。
闇の奥に蠢く、鈍いひかり。
「な、なんだ!?」
「な、なんだこれは――…!?」
ロックは素早くかがんでかわし、短刀でそれを切断した。
ロックは再び神経を集中させてあたりをうかがった。
だが、その瞬間。 ロックの背後に、先程のものとは違う触手が、
ロックは他に何か方法がないかとあたりを見回そうとして、
動力炉の狭間の狭い通路で自由を奪われているロック。
「……!!」
「エドガー!!エドガ――!!!」
なにか…なにか、他に方法は――…!?
武器を失った今、攻撃によるダメージは望めない…。
最後の望みをかけ、ロックは再び呪文の詠唱に入った。
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「――はぁ…っ、……っぁ……」 ロックは触手に吊されたまま、がくりと脱力した。 すっかり疲労し、もう指先ひとつ動かすこともかなわない。 虚ろにひらいた瞳の前には、うねうねと蠢く触手。 右を見ても、左を見ても。遥か下方を見下ろしても。 (あぁ、俺…死ぬんだな) 仲間の居城の地下深くで、人知れず。
なにもかも諦めてしまいそうになったそのとき、
「………?」
眉根を寄せながら深い呼吸を繰り返し、
――誰かが、ここにいる? 朦朧とした意識をなんとか繋ぎ止めながら、
その人物は、再び歩み寄りながらロックに声をかける。
…――エドガーの、声!? ロックは愕然としながら目を凝らす。
な…なんだ!?一体どういうことなんだ!? 「よくできてるだろう?」
――――は? 「この素材を調達するのに、だいぶ苦労したんだ」
つまり、なんだ…!?
こ、このバカ国王が…っ!!
今すぐにでも張り倒してやりたい気持ちでいっぱいだったが、
そんなロックの心の叫びなど知るはずもなく、
エドガーはロックを抱き起こして、治癒魔法を唱えた。
「途中で俺の名を呼んだとき、シビレたよ」 ロックの肩がわなわなと震えだす。
なんとか無事に寝室に戻っても、ロックの怒りは収まらなかった。 だいたい、なんで俺がこんな目にあわなきゃならないんだ!!
ロックはやり場のない理不尽な思いをペンダントにぶつけんと
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